以下はすこし前に、別の場所に書いたものなのだけれど、自分の雑文の中では割とまとまった方なのでここに再録します。読書感想文です。
「アトランティスのこころ(スティーヴン・キング/新潮社)」上・下 タイトルがなんとなく
「小沢昭一的こころ」に似ているというクソのような理由で今まで読んでいなかった。プレゼントなのに放り出していた。が、これではいかんと義務感で読み始めたところ、第1話のつかみで「あっ!これは「スタンド・バイ・ミー」+「IT」なのでは?という事は大傑作?」と思い当たり、紙面に埋没した。気がつくと1時間半も経っていたのだった。暑さしのぎに寄ったミスタードーナツで。気がつけばコーヒーで胃がガボガボだし、煙草吸いすぎで少し吐気がするし、取り敢えず店を出て帰宅。
そして更に読む。
いつもいつも思うことなのだけれど、キング全作品は俺にとってスタートまでが面倒すぎる。買ってから・或いは借りてから・贈られてから実際にページを開くまでのためらいというか疲労感(未読なのに)が尋常じゃない。「こんなに厚いんだ・・・読む前からもううんざり」というプログレ的疲労なのだ。「イエスソングズ」や「タルカス」はもうCDを手に取る前から疲れるじゃないですか?それと同じで。
今、未読の「ダークハーフ」が部屋のどこかに埋もれているけれど、これもいつになるのか。はぁ・・・。
一旦読み出せば、そして最初の30分が経つ頃には面白くて堪らず、会う人毎に「すげえよこれ!」と難詰したくなってしまうのに、なんだかなあ自分。
同じくらいスタート前にうんざりする京○○彦は残念ながらこれほどのフックは持っていないように思う。
話が逸れた。
上巻後半で
、「ダークタワー」シリーズと世界観を共有している事に気付き、絶望にかられてしまった。
というのは、俺は上記ダークタワーシリーズは「魔道師と水晶球」までしか読み終えていないのだ。という事は、これをクリアしていない以上、俺はこの話のキモを理解できないままに、当「アトランティスのこころ」を読み進めねばいけないのか?大丈夫なのか?非常に勿体ない気がしてしまう。
この辺になると、
ボビー頑張れ頑張れテッドお爺ちゃん魅力的だよ蝿の王面白いよキャロルかわいいよファーストキスいいなあいいなあサリージョン比較的どうでもいいよやっぱりお母さんは思った通りヤられちゃったなぁボビーなんとか切り抜けてくれそして大ネタの黄色いコートの下司男これからめくるめくダークファンタジー開幕かオイ畜生血が騒ぐぞ等々、かなりに熱くなっていたのだが、上巻末尾のわびしく胸の苦しいある種のアンハッピーエンドで打ちひしがれ気味。
が、この後更に宇宙的巨悪と丁々発止のやりとりだグフフフとはならず、なにか全然テイスト異なる下巻の滑り出しにちょっと唖然。
ああ、ボビーこれからどうなっちゃうんだ・・・。 なんだかアラン・シリトー的な転落の構図に。
下巻。話者が変わる。読み進むうち
「団塊の世代の青春哀歌だよ!でも日本だったら「赤頭巾ちゃん気をつけて」「二十歳の原点」みたいにじっとり湿ってるけどこっちはサイケで反戦運動でピースでウッドストックでカーセックスだよ!」編、あるいは「実録!ボンクラ大学生はこうして量産される!」編と判る。
正直このへんであんまりガツンと来なかったのでちょっとつらい。でもいつかボビーその後の冒険譚になるのだと信じて更に進む。
ボビーが全然出てこないままこの章終わり。ええっ?
この章のキモであるところの、賭けトランプゲーム「
ハーツ」(当然タイトルにかけてるのだろう)がまるで判らんというのが敗因か。
俺は常々、政治・経済・スポーツ・ギャンブルが全然判らないという事で「俺って全然人並みの男として資格取得できてないんだ、、あぁ困ったなでも今更どうしようもないし」と日々自らを苦々しく思っているのだが、今回そのうち一つギャンブルがテーマというか通奏低音なので、このあたりサクサク読み飛ばした。そしたらなにか損をしたような気分になった。
読後に,「PC内に同じ「ハーツ」てなかったけ?」と思い当たり、プログラムファイル>ゲームという経路で「ハーツ」を一応起動してみた。そういや俺Win95時分から、この手のバンドルされたゲームってほとんどやった事なかった。マインスイーパを数分やって、あまりにできないので逆上した記憶しかない。
取り敢えずハーツ起動。
(3分経過)
ダメだ!ルールがひとっつもわかんねいよう~
やめやめやめ!俺にはゲームの才能がないらしい。少なくともテーブルゲームの才能は無いなあ。
以前入院した時にバックギャモンを持ってきた人は、覚えの悪い俺にむかついて、病人(この場合俺)相手に散々毒づいてキレて帰ってしまった。ひどいよ・・・。
ああ・・・。今、心の傷が開いてしまい、少し悲しくなってきたんでちょっと泣きます。
(5分経過)
よし泣き止んだ。感想再開。
米国サイケヒッピーボンクラ学生の話だった。
今の気分として「二十歳そこそこの若者の葛藤とか鬱屈って、割とどうでもいい」というのがあるので、そのあたりでかなり醒めてしまったというのもデカイ。おかしいなあ。上巻の60年代初頭の風俗だってカウンターカルチャー期と同じくらい自分から遠いのに、なにかあまり思い入れ出来ない。
釈然としないままこの章読了。
どうでもいいけど、青春小説ぽい切ないラブロマンスシーンでは吉田秋生の、「ハーツ」シーンでは福本漫画キャラに勝手に脳内変換して読んだところ、結構いい感じでした。やってみて!
次。「盲のウィリー」編。
(今「めしい」でも「めくら」でも変換出来なかった。IMEも言葉狩りに遭っているのか。ほんと本義を外した差別反対運動って下らないなあ。差別語は単語ではなく文脈だというのに)
「唇のねじれた男」だった。以上。
このあたりで「この話は団塊(あちらではベビーブーマー世代か)の精神史なのか」と思い当たる。という事は、フォレスト・ガンプかビッグ・チルと同じか・・・日本人にはつらい(感情移入しにくい)展開になってきたなぁとも思う。
さらに次。「なぜぼくらはヴェトナムにいるのか」。
あぁ・・・ティム・オブライエンだ・・・。
調べたところスティーヴン・キングはヴェトナム従軍経験は無いとの事。このあたり本国での反応はどうだったんだろう。作者の体験とテキストは切り離して考えるべきとは言え、そのへん突っ込まれなかったのか気になる。
そして、911以前においては、アメリカの負った一番深い傷とはヴェトナムなのだなと強く思う。
関係ないけど
「ジャングル・クルーズにうってつけの日(生井 英考)」再読したくなった。これも部屋のどこかにあるはずなのけれど。ああ。
終章「天国のような夜が降ってくる」
甘く苦いエンディング。粛然とした。涙した同国人は多いはず。きっとそうだ。
でも・・・中盤で脱落してしまった俺は・・・残念ながら「IT」よりは「来なかった」。
そして<破壊者>ってなに?判らないまま話が終わってしまった。
第1話だけを膨らませて欲しかったよ・・・と思ったら、
映画版はまさにそういう話らしいので
今度レンタルしようと思う。
上下巻で通算6時間かかりました。
このあときっと再読すると思う。
お疲れ様でした>自分