0020-06-07

一行感想

・わが赴くは蒼き大地/田中光二(角川文庫)
考えてみれば海洋SFを読むのはほとんど初めてだ・・・少なくとも地球の海が舞台という点では。
(「スタータイド・ライジング」(D・ブリン)は異星の海話なので)
第2部と第3部の温度差に思わず笑ってしまった。いや決して貶しているのではない。
それまでの設定とプロットをある意味ぶん投げ。すごい計算だ。構成ミスなわけはないので明らかに作為的なものだろう。なかなかできる事じゃないですよ。惜し気もなく次のテーマを投入。
それにしても昔の長編は300枚程度でキッチリ収まっていて、ちょうど良いサイズで良いなあ。最近の小説ってぶ厚過ぎないか?何が悪くてこうなっちゃったの?執筆環境が電子化されたから?
やや長いサイズのあとがき(というか独立したエッセイとしても読める)「冒険小説の読めない人生なんて…」が素晴らしい。彼流の創作論を開陳。秘密の書斎を覗いたかのような気さえしてちょっとドキドキする。


・三国志の英傑/竹田晃(講談社現代新書)
たいへん格調高い文章なのだが(どえらい中国文学者センセーだから当たり前か)、時折筆が滑ったのか(いや、意図的なものだな)講談調になるのがなんとも微笑ましい。三国志というのは元々そういうものかもなぁ。なにしろ「演義」だし。
寝る前に読むとちょうどよくトロトロするのもいい感じ。すいません。


・イギリス交際考/木村治美(文春文庫)
なぜか分析できないが微妙に腹が立った。どうしてか判らん。
「曙のイスラマバード」はけっこう好きなのだが、どこに自分の好き嫌いのツボがあるか全くもって分析できない。
しかし海外生活本をパスポートさえ持ってない俺がどうこう言うのはかなり間違ってるよなぁとも、また思う。
この人は「愛を乞うひと」作者とは別人なんですね。今知った俺はホント無知無教養。


・辺境の惑星/アーシュラ・K・ル・グィン(ハヤカワ文庫)

読んだ事は読んだがまだ消化しきれていないので表紙についてだけ。
初邦訳はサンリオSF文庫で、そっちも持ってる(持ってるのに読んでないって一体何なんだ自分)が、それは竹宮恵子イラスト。申し訳ない事にちょっとその出来がきつかったのでこれまで食指が動かずスルーしていた。
今回もまたイラスト。岡野玲子作だ。おお~「コーリング」(つか「妖女サイベル」)みたいな味で、イイですよ!でも表紙と内容が全然即してません!なにゆえ?後ろの幽霊は一体誰?順当にいくとアガトだけどそんなくだりは無いし・・・。うーん「心話」の漫画的表現?違うような。
私見だが、80年代少女漫画家とル・グィンの親和性は相当高いような気がする。他作で表紙を描いた萩尾望都にしても、吉田秋生にしても、成田美奈子にしても。今の漫画家さんはSF読まないんですかね?俺は寂しいッス!


・あんちゃん/山本周五郎(新潮文庫)

短編8作。今回特にきたのは「菊千代抄」「七日七夜」。特に前者。
非常にダメな例えでいうと男装美少女萌え話です。救われない「リボンの騎士」とでもいうのでしょうかね。
男として育てられた姫(主税という名前までつけられちゃって)、長じるに従って累積する違和感、そして性の目覚め。これは苦しいわ。
ジェンダークライシスってなーこういう事?オレ学がないから判らんが合ってますか?
他、夜這いレズとか、ヤンデレ振り(マジで血を見るほど家来を折檻)とか、驚きの伏線とか、
「やあ、若さまのおちんぽはこわれてらあ」
いう大暴言(俺、いわゆる文学で「ちんぽ」と明言した小説初めて読んだわ)そして羞恥イベント等等、
現代的な視点で読むと随分示唆に富む一作でした(出まかせ)。漫画化するなら山口貴由(若先生)で是非よろしくお願い致します。

山本周五郎先生が怒りのあまり黄泉返ってきそう。すみません。

ああ、でも「青べか物語」だけはつらすぎてこんなナメた事書けないや(それが俺の限界)。
それにしても昔の小説って「人間いかに生きるべきか」というテーマから一歩もぶれないのよなー。当然か。それが文学の役目か。


・愛のゆくえ/リチャード・ブローティガン(新潮文庫)

ああまた買いなおしてしまった。通算4回目くらいか。擦り切れてバラバラに壊れたり人にあげたりしているせいだ。
女の人が掻爬するという結構キツイ話なのだけれど、なんでこんなに爽やかなんだ。未だに理由がわからん。あまりにも読み返しているせいで全然引いた位置で評せない。これはこれで困った事。
ところで、また再読して思った事がある。
「俺はこれから古今東西の「図書館がテーマの小説」を全部読むぞ!」
という事。
ボルヘスとかエーコとか村上春樹は基本として、他どんなのがありますかね?


・美味しんぼ 第589話その11(雁屋哲/花咲アキラ)
軽いむかつきはあるが、もう結構どうでもいいです。あー終わった終わった。
月1回二万円のメシ(トリュフパスタ)を食うと一家団欒になるらしいですよ!オーストラリアで毎日ボケた暮らしをしてるとこんな(以下3行自粛)

とはいえこんなに行き詰っているのを、あからさまに見せたのはなかなか凄いかも。
そして雁屋哲はともかく花咲アキラ(漫画界のチャゲ)は今後どうなるんだろう。


・ジェニーはご機嫌ななめ(作詞:沖山優司/作曲:近田春夫)/Perfume
意外にもこれまで聴かずに過ごしてきた。今回初めて某所で聞いたが
いまひとつです。
「GAME」の後に流れると聴き劣りするのは否めない。もしかして中田ヤスタカ氏はこの時点(EP「スウィートドーナッツ」C/Wだから'04年くらいか?)では割とどうでもいいと思っていたの?結構やっつけ感があるような・・・。
同じジューシィフルーツなら「夢見るシェルター人形」カバーすればよかったのに。でもそれだとフランス・ギャル~ゲンズブールという別の意味がついてしまうのか。それもあんまりか。ミン&クリナメンを思い出すような人は別にいませんか、そうですか。
イントロのあの有名フレーズの音色がなー、あまり良くないような気がする。あのマリンバと弦ピチカート音を混ぜたようなアレ。やや安易では・・・。これだと深田恭子の「キミノヒトミニコイシテル」のリフ音色と同じでは・・・。それとも当時流行ってたのか?
それから「抱き合って眠るの~♪」でそれまでのバスドラ4つ打ちがいきなり消えるので、聴感上すごく失速したように思えてしまう。抜き差し(つかメリハリ)の必要上消したのでもない事は明白。なぜ大サビ直前でこのようにつんのめるような理不尽な事を・・・。素人のオレにはよく判りませんが多分深い思想でもあるのだろう。
だがしかし大サビ「そうすればとにかく少しは」の整然としたコーラス(つか多分実際歌ったのではなく画面上でハーモナイズしたのだな)、トライアドが下降してゆくゾクゾクッとする感覚は素晴らしい。官能すら感じる(@「昴」/曽田正人)。個人的にこの部分大好きです。
ヴォーカルエフェクトが「近未来三部作」以前だからとても控え目なところが違和感の原因だろうか。だとすると、凄い事だぞ。生歌だと本人らしくないとさえ思わせるなんて・・・。
話変わりますが「スウィートドーナッツ」は同BPMのままでギターポップアレンジにしたら狂おしく切ない曲になるような気がする。・・・そうするとショコラになるのか?やっぱり却下。


・そしてこれまで全然「一行」感想じゃない件について。
 筆荒れてるなあ俺。全然推敲のあとがみられません!冗長杉!

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